2.日露貿易のトレンド
3.対露主要輸出品動向
4.対露主要輸入品動向
統計資料
(表〜4) 日本の対ロシア輸出商品構造(1894年〜1940年)
(表〜5) 日本の対ロシア輸入商品構造(1894年〜1940年)
はじめに
分担研究者である筆者の課題は、1890年代から1990年代末までの100年余の期間における日露貿易の歴史を統計的に分析することである。本デスカッション・ペーパーは、その前半部分を構成する1890年から1945年までの日本のロシアおよびソ連との貿易を統計的に通観することを目的としている。承知のようにこの時期の日露間には、日露戦争、第一次世界大戦、ロシア革命、シベリア出兵、満州国建国、第二次世界大戦等世界を揺るがすような大きな出来事が発生した。このような環境のなかで日露貿易はどのように変遷したのであろうか。当時、日本国大蔵省が編纂していた『日本外国貿易年表』をベースに分析してみたい。この統計は日本の基本的な統計であり、日本の外国貿易を知る上では最も重要である1。
なかでも、興味深いのは、この統計は日本の対露貿易を露領亜細亜と露西亜とに区分していることである。このような分類は1894年に登場し、少なくとも統計の存在を確認できる1939年まで続いた。『日本外国貿易年表』は国別と商品別とに大別されるが、貿易相手国として国単位を対象とするのが通例である2。 日本政府はロシアをどのように考えていたのだろうか。今日、ロシアが「 我が国はアジアの一国である 」と主張し、経済面でもアジア・太平洋地域への統合に意欲を燃やし、1987年11月の橋本・エリツィン会談では日本がロシアのAPEC加盟支援を表明したことで満足の意を示したことを考えれば、すでに戦前期に日本政府がロシアにおけるアジア地域を意識していたことは注目に値する。貿易面では戦前期にすでに今日的な姿が具現化されていたのであり、貿易の中身が現在と比較してどのように移り変わったのかを検証したい欲求にかられたのが本テーマの分析の背景にある。