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書評 >その他 《誰のためでもない書評》

 最近出た本に丸谷才一(編著)『ロンドンで本を読む』(マガジンハウス、2001年6月21日刊)がある。これは、ロンドンで出版されている新聞、雑誌の類に載った名書評を集めたものである。丸谷が紹介しているように、イギリスには書評文化というものが確立されており、個々の書評家は信用度や文筆力でランク付けされている。わが国ではともすれば、書評が出版社や著者の先棒担ぎとなり、本の内容に関して冷徹な判断を下したり、著者も気づかないような点について注意を喚起したりすることは稀であるし、そのような紙幅も与えられていないのが普通である。ところが『ロンドンで本を読む』に収められた書評は、立派に現代イギリス批評選集になっている。私自身、イギリスの書評を読む癖をイギリス留学時代に身につけ、とりわけロンドン・タイムス文芸付録を読む楽しみはいまだに続いている。いつか、タイムスの書評のような文章を書いてみたいと思いつつ、これまで目先の締め切りのある雑誌の書評しか書いてこなかったというのが実情である。
 ホームページを立ち上げるに当たって、新聞や雑誌のために書く書評ではなく、私自身が面白いと思った本についての全く個人的な書評を載せるコラムを作ることにした。コマーシャル・ベースの書評では、長さが制限されており、また読者層も想定されているので、選ぶ本も自ずと限定されてくる。もちろん、決められた字数の中で、決められた時間内に、手早く一冊の本について解説すること自体は、一種の作文のトレーニングにはなるが、たまには、職業意識から離れて、好きな本について、興味を掻き立てられた本について、制約なしに論じてみたいものである。このコラムはそのような目的で作られたものである。従って、本のジャンル、書かれた言語についての制約は何もない。興味が起こった書評だけを読んでいただければ、それで十分である。
「環境の経済史:森林・市場・国家」 平成26年9月22日
「輝く日の宮」 平成15年7月30日
「日本の経済システム」 平成15年7月17日
「熊の敷石」 平成14年6月9日
「When We Were Orphans」 平成14年6月8日
「紙の迷宮」(A Cnnspiracy of Paper) 平成14年6月6日
「斧」(The Ax) 平成14年5月14日
「組織の経済学」 平成10年2月7日