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ドナルド・E・ウェストレイク(Donald, E.Westlake)(著)、木村二郎(訳) 文春文庫 |
これはミステリーというよりブラック・ユーモア経済小説である。失業中の元製紙会社社員がなんとか雇用を得ようと、努力するという内容であるが、その努力が並みの努力ではない。なんと自分と競争相手になりそうな他の失業者を次々と殺し、最も就職したいと思った会社の現役社員を殺して、ぬけぬけとその職に就くというストーリーである。この小説の味噌は、職種別に専門性があり、それぞれの職種によって途中採用を行うというアメリカの労働市場の特性がよくわかること、そしてその職種の人が必ず読むであろう専門誌があるということ、その専門誌の求人欄を通して、近隣の失業者で潜在的に自分の競争相手になりそうな人を見つけ出すということなど、いかにもアメリカ的な発想の行動が次々に出てきて、しかもそれが実に滑稽に描かれていることにある。一気によめるエンターテイメントであると同時にアメリカの労働経済に関心のある人にとっては興味深い事例研究となっている。 |