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経済体制研究部門

比較経済体制論は、第2次世界大戦後、欧米諸国において比較戦力論として出発した研究領域である。戦後期には、資本主義体制の側では国家の経済への介入、すなわち「混合経済体制」が定着した。また、社会主義体制の側では中央集権型と分権型の社会主義の多極化が進み、かつ中央集権型の社会主義においても市場メカニズムの導入が試みられるに及んで、研究の層と質が飛躍的に拡大され、実証分析と理論的・制度論的研究を総合する研究分野として体系化されてきた。さらに、旧ソ連・東欧における社会主義経済の崩壊と市場経済への移行という新たな事態が発生し、体制転換の実証的・理論的検討の課題がこの分野に加わった。また、その一方で、資本主義諸国においては、コーポレート・ガバナンスのあり方や雇用システム・労使関係の相違に応じて、経済システムの制度的差異が顕わになってきており、この点の解明が強く求められている。社会主義経済が崩壊したとはいえ、移行諸経済を巻き込みながら,資本主義経済が全体的にいかなる方向に発展して行くかという問題が解消されたわけでは決してないのである。本研究所の研究体制が地域研究において資本主義諸国と社会主義・移行経済諸国にまたがってきたという有利性を生かして、本部門では研究の焦点を資本主義と社会主義・移行経済の体制的相違と体制転換の質的側面の分析に置く。また、市場経済の多様性の解明に研究の力点を置く。さらに、そうした経済システムの差異の基礎にある経済思想の性格を明らかにする。

比較経済体制

本研究科目は「経済体制」部門の総括者の位置を占め、次のような研究テーマを持つ。

  1. 「市場経済体制」「計画経済体制」「経済思想」の各研究科目で行われた研究を基にして、各経済システムの特質・位相・将来像を比較対照する
  2. 経済システムの多様性を比較経済制度分析の視角から分析する
  3. 旧社会主義国における経済体制転換を比較検討する
  4. 資源制約や環境問題の深刻化が経済体制の在り方にどのような影響を与えるかを分析する

本研究科目は以上のような総合的研究に重点があるために、各種の共同研究-本部門内の共同研究だけでなく、本研究所内あるいは学際的共同研究も含めて-を企画推進する場合の中核となる。
 

 

市場経済体制

市場メカニズムをサブ・システムとしてもつあらゆる経済体制における市場経済の構造と機能をその経済制度の特徴と関連させて明確にすることが、本研究科目の全般的テーマである。 とりわけ、市場経済メカニズムを中核的要素とする現代資本主義の諸問題の研究に重点を置く。

主要な研究テーマは、次のとおりである。

  1. 国家の経済への介入に伴う市場メカニズムと計画メカニズムの結合の仕方及びそれらの相互関係の分析
  2. 市場の失敗を初めとする現代経済に特有の諸問題の経済体制の変化との関連の研究
  3. 現代市場経済におけるコーポレート・ガバナンスと雇用システム・労使関係の分析

計画経済体制

本研究科目においても計画化をサブ・システムとしてもつあらゆる経済体制における計画化の意味・機能・体制的特徴を明確にすることを一般的目的とする。 そのさい近年の情報公開を踏まえて社会主義計画経済の制度と運営の実態を分析し、その到達点と問題点を検討する。

主要な研究テーマは、次のとおりである。

  1. 資本主義と社会主義における計画化の対比
  2. 社会主義経済における計画化の実態の解明

経済思想

経済思想は各国、各時代の実践的課題を反映し、またその指導理念でもあって、経済システムの認識およびその形成に重要な役割を果たす。 本研究科目は、経済思想を比較史的展望の相において研究することによって、比較経済体制論の深化に寄与することを目的とする。

主要な研究テーマは、次のとおりである。

  1. 経済システム認識の思想を比較史的文脈の中で研究する
  2. 経済思想と政策形成の関係を思想史の視角から分析する
  3. 経済システムの変化に対する思想・理念の果たす役割を研究する

なお、本研究科目は思想史的接近を特徴とするため、関連する資・史料の整理、編纂等を必要に応じて行う。

 

各所員の研究課題

岩﨑一郎

  1. 中東欧及び旧ソ連諸国における市場経済化20 年史のメタ分析
  2. 世界的金融危機の旧社会主義移行経済への影響に関する実証研究
  3. ロシア株式会社制度のミクロ実証分析
  4. 中央アジア第二次産業長期発展経路の統計・計量分析

高見典和

  1. 第二次大戦後の米国での,物価変動にかんする理解が一般メディアにおいてどのように形成され,拡散していったかを考察する研究

都留康

  1. インセンティブ・メカニズムとその変化の分析:自動車販売会社の人事データに基づく、業績給制度と個人の生産性に関する日本と北米の分析
  2. 東アジアにおける製品開発と人材マネジメント:聞き取り調査とアンケート調査に基づく日本・韓国・中国企業の比較分析