ミャンマー・フィールド調査から(3-1)
ミャンマーの働く農民と牛
黒崎 卓
Last revision: October 11, 2002
2002年9月の調査では、インド国境に近いチン州を訪問。この山岳地帯では、半野生の牛、ナナオ(Gaur)が重要な資産。ミャンマーで一般的なこぶのあるインド牛とは見掛けがかなり違い、牛と水牛の中間みたいな見掛けをしている。村人はナナオを高級肉として珍重する。一頭一頭に持ち主がきちんと決まっており、塩を与え、病気にならないよう気を配るが、基本的には森に放牧する。役牛としては用いない。というわけで、いきなりタイトルに嘘あり!ということになるが、ミャンマーの働かない牛の貴重な写真である。
ここからが本題の働く牛。まずは1月の下ミャンマー農村。手前にはまだ収穫が終わっていない雨季稲の穂、その向こう側では乾季稲の田植えに農民は忙しい。この田んぼは水が深いので、雨季前にジュートを作ることも不可能ではない。
近くの水はけの悪いデルタ地域では大規模な開拓事業が行われていた。二頭立ての水牛を用いた代掻きを念入りにやる農民。
もう少しこれをアップにしてみると、立派な角を持ったswamp型の水牛であることが分かる。水牛の分類と役畜・乳畜に関しては、南アジア・フォト・エッセー、「南アジアの働く牛」を参照。
同じく1月、乾季真っ最中の上ミャンマーはマグウエ管区はとにかく乾燥しきっていて、水が多少はある下ミャンマーとは大きな違い。この写真はそんな畑から帰る農民が牛車を走らせる様子。ミャンマーの牛車は縦の棒が微妙な曲線を描いていて、とても美しい。
マグウエ管区の別の村、ゴマとキマメを連作した畑で、最後のキマメの収穫が1月に行われている。この収穫が終わると、畑は役牛で耕起され、次の雨季の雨がくるまでの約6ヶ月、全くのほこりだらけの乾燥風景となる。
おなじ畑の二頭立て役牛を用いた耕起の光景。3枚前の水田では二頭立ての「水牛」だったが、ここでは去勢雄牛にに変わっていることに注意。ミャンマーの犂は、箱型構造をしていて、これもやはり南アジアよりも東南アジアに近い。南アジアの犂については、「南アジアの働く牛」でも少し紹介してある。
1月の上ミャンマーであっても、灌漑用水があればこのように緑あふれる農業生産が可能になる。これはトウモロコシへの潅水作業に従事する農民。こういう場面に出くわすと、どうしても南アジアの農村と灌漑と比較してしまう。
ネコのいるミャンマー農村
ミャンマーの働く農民と牛
下ミャンマーの稲作農村
シャン州インレー湖の浮畑農村
シャン州野菜作農村
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