[1]指標接近法
[2]所得接近法
表5 GDP( 1983年価格、billionルピア ) ; 主要セクター別
表10 Polak データによるサービス業GDPの比較( 1930年 )
本稿の目的はインドネシアの戦前のサービス部門( 第3次産業部門 )のGVA( 粗附加価値 gross value added )の推計法を吟味し、われわれなりの推計値を提示することである。
サービス業部門のGVDは、GNPの長期推計の中でも最も困難な部分である。これはこの部門の生産活動が中小の個人的企業によって行われる部分が大きいため、その産出・投入ないし所得データがきわめてとぼしいことによる。日本に関する長期経済統計でも、その商業サービス業(B)の推計値について、ある部分については「過大推計」のおそれを、またある部分については、「第一次接近」でしかないことを断らざるをえない結果となっている。また、この部門の推計は計3度改訂されており、その推計の改善は全体の推計の中でも「最も重点をおいた分野」であったとされている( 大川他 ( 1974 ) p. 138, p.149 )。
この部門のGVAの推計方法は大きく分けて2つある。第一は、かりに所得接近法ともよばれる方法であり、ある年の1経済主体当たり所得ないし、利潤、賃金データを基礎に、その経済主体の数の時系列的変化と類似の所得( または利潤( 賃金 )の時系列的変化を勘案して推計する方法である。インドネシアの長期推計ではPolak( 1943 )が主としてこの方法で1921〜39のサービス業GVAを求めている。わが国長期経済統計の商業サービス業(B)の推計および土方推計( 土方( 1933 ) )の商業部門の推計も基本的にこの方法によっている。第二の方法は指標接近法であり、Eng( 1992 )でこの方法が採用されている。これは、比較的精度の高い最近時のサブセクター別のGVAを基礎としてそのセクターの生産活動に関係の深くデータ的にさかのぼれる変数を探し出し、サブセクターのGVAとその変数との固定的関係から過去にむかって外押( extrapolate )する方法である。
以下では、これら2つの方法による既存の推計法を紹介し、その批判的検討をふまえて、インドネシアにおけるサービス業部門GDP推計改良の方向をさぐることとする。なお、ひとつの積極的貢献として、1920〜30年代の運輸通信業のGDPのかなり良好な推計値が得られたので、その結果をも報告しておく。