Appendix 1

 

 戦前期日本の銀行業GVAの推計について

 本論に示してあるように、1919〜30年については土方推計の数値を利用したが、1931〜40年については 『 銀行局年報 』 を用いて次のような方法で銀行業GVAを推計した。なおここで求めるGVAとは、当期純益金と人件費の和を指す。

 特別銀行については損益計算書に 「 当期純益金 」 ならびに 「 給与及び報酬 」 が記載されている。つまり両者の和を特別銀行のGVAとした ( 正金はさらに「 手当 」を加えている ) 。ただし、農工銀行については経費内容が不明のために人件費に相当する費用額を得ることができない。そこで各年次について、他の特別銀行の総損金 ( 総支出 ) に占める人件費の割合の平均値を農工銀行の総損金に乗じて人件費の推計値とした。

 普通銀行、貯蓄銀行については当期純益金は記載されているものの、人件費は 「 営業費その他 」 に含まれる費用とされているため具体的な内訳は不明である。ただし 『 本邦経済統計 』 には1930年代の普通銀行の預金債券経費率のデータがあり、これには人件費と物件費とが分離されている。このデータから1934〜35年の経費に占める人件費の割合 ( 0.64 ) を求めることができる。しかしながらこの割合が対象期間の10年間で不変であったと仮定するには無理があると考えられる。ここでは普銀・貯銀 ( 両者が同様の行動様式をとるものと仮定している ) の人件費と物件費の1935年における比を0.64と考え、これが特別銀行の人件費と物件費 ( その比率は『銀行局年報』から容易に求めることができる ) と同様の成長率で推移するものと想定し、算出した。そしてその値を 「 営業費その他 」 項目に乗じた値を人件費の推定値とした。

 外国銀行日本支店であるが、 「 当期純益金 」 については 「 総益金 」 と 「 総損金 」 の差とした。人件費は記載されていないが、ここでは普通銀行・貯蓄銀行の総損金に占める人件費推計値の割合を各年次求め、外銀日本支店の 「 総損金 」 にこの値を乗じて人件費の推定値とみなした。 以下に銀行業のGVAとともに[1](2)節で用いた諸データを示しておくこととする。