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ご挨拶

 一橋大学経済研究所・規範経済学研究センターは2014年6月に発足しました。規範経済学が扱うテーマは、狭義の経済学をはるかに越えて、哲学、倫理学、社会学、法学、政治学など社会科学の全領域に広がります。規範経済学の方法は、物理学、生物学、生命科学、公衆衛生学、市民工学など自然科学の諸領域と密接な関連をもちます。規範経済学研究センターの課題は、先人たちの知見や智慧を深く読み解きながら、また、先端的な業績や発想を広く学びながら、規範経済学の潜在能力をできるだけ豊かに、注意深く拾い上げ、育むことにあります。とりわけ次の3つの分野において学問に貢献することを志しています。

(1)規範の生成・浸透・消滅プロセスを論理的に、また、実証的に分析する研究、すなわち、「規範の事実的(実証科学的)分析」

(2)事実的分析に潜む規範的判断を明示化する研究、すなわち、「事実の規範的分析」

(3)(分析者自身の視点も含めて)規範的分析それ自体の被制約性、制度負荷性を批判的に問い返す研究、すなわち、「規範の規範的(規範哲学的)分析」

 日本国内のみならず国際的にも数少ない規範経済学の研究拠点として、私達はさまざまな活動を行ってまいります。率直なご意見・ご批判を含め、規範経済学研究センターの活動にご協力くださいますよう、心からお願い申し上げます。

規範経済学研究センター主任 後藤玲子


規範経済学研究センターの設立に寄せて

一橋大学名誉教授 鈴村興太郎

 一橋大学経済研究所に規範経済学研究センターが新たに設立されたことは、この大学で戦前以来蓄積されてきた経済学の規範的な側面の研究が、持続的な進化を遂げるための制度的条件が整ってきたことを意味しています。センター設立を実現するために努力を傾注されてきた方々、特に、細部にわたる努力を惜しまれず、センターの設立を先導された後藤玲子教授、センター構想に理解ある支援を惜しまれなかった深尾京司前所長、新たな組織の立ち上がりに必要な支援作業に尽力されたスタッフには、深い敬意と感謝を捧げたいと思います。また、本日のセンター発足記念シンポジウムにおいて、センターの今後の研究活動の道標となる講演を引き受けて下さった塩野谷祐一先生、伊藤邦武先生、堂目卓生先生、橋本努先生、河野勝先生には、厚く感謝申し上げます。

 新たな組織の誕生と進化にとって、中枢に位置するメンバーが自生的に結集すること、叡智に満ちた理解者のグループが、コアの周辺に緩いサテライトを形成することが、不可欠であるように思います。誕生して間もないセンターが持続的な成長と進化の軌道に載れるかどうかは、これらの条件が継続して満足されることにかかっています。本日お集りの皆様には今後もセンターの成長と進化を見守って、必要なご叱正を賜りますようにお願い申し上げます。

 世界的な視野でみても、規範的経済学の哲学的な基礎、厚生経済学と社会的選択の理論の最先端における堅実な研究、これらの基礎論を踏まえて人間生活の改善の道具を整備して、福祉の制度と政策に関する提言を社会に発信できる研究基地は、非常に稀であります。この論脈で私の心にいま思い浮かぶのは、ロンドン・スクール・オブ・エコノミックスに附置されたセンター・フォー・ザ・フィロソフィー・オブ・ナチュラル・アンド・ソーシャル・サイエンシスがあるのみです。ポッパーとラカトシュの伝統のうえに築かれたこのセンターには、チョイス・グループというコアがありまして、本日発足した規範経済学研究センターの成長を計る参照標準として、相応しい組織のように思われます。まだ揺籃期にある一橋大学経済研究所の規範経済学研究センターですが、長期的には楽観的で短期的には細心・着実な前進を続け、やがてはLSEのセンターと比肩できる研究基地として、国際的な評価を獲得されることを期待して止みません。

(規範経済学研究センター設立シンポジウムでの祝辞より)