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問題関心と組織図

問題関心

1950年代から80年代にかけて、経済学と政治哲学・倫理学の協同にはめざましいものがあった。新厚生経済学が洗練されていく、まさにその傍らで、社会科学の総合的知見をもとに、狭義の厚生主義的方法論に対する批判と厚生経済学の新たな展開が図られたのである。

例 えば、J.ロールズの『正義論』(1971)には、K.アロー、J.ハルサニー、マスグレイブ、A.センら経済学者との学問的交流の跡が明確に残されてい る。センは、さらにA.バーリンの自由論やヘアの道徳理論に挑んだ。また、哲学者B.ウイリアムスと経済学者A.センの共編である、 Utilitarianism and beyond (Cambridge University Press, 1982)では、ロールズ、R.ヘア、C.テイラーらによる倫理学・政治哲学理論と、J.マーリース、F.ハーン、P.ハモンドらによる経済学理論との対 話が図られている。社会政策と経済学理論の連関を図ったT.アトキンソン、J.スティグリッツらの活躍も忘れることができない。

日本でも早 くから、規範哲学と実証科学という経済学の2つの分析視点を切り離すことなく、効用に代わる新たな指標を研究する素地が準備されていた。鈴村興太郎の「権 利」の社会的選択理論(『経済計画理論』, 1982)、塩野谷祐一の「正義」の経済哲学理論(『価値理念の構造:効用から権利へ』, 1984)、石川経夫(『所得と富』、1991)などである。

だが、1990年代頃から、両者の関係は次第に薄れていく。厚生経済学と政治 哲学・倫理学は同一の主題について、異なる言語で議論を展開していった感がある。本研究センターの目的は、再度、両者の知見を総合しながら、規範経済学理 論の歴史・方法・哲学的な基礎を解明することにある。

組織図

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