(Yachiyo International University)
付録資料:独立後インドの物価指数の概要
統計資料:
図16 物価指数における食糧指数上昇率 WPI-10=AL-IWの関係図(79MR-84D)
図17 物価指数における食糧指数上昇率 WPI-10=AL-IWの関係図(84D-89D)
本稿は政治分析の用具としての各種物価指数の有用性をインド政治を対象に検証する試みである。インド政治では、物価の上昇が政権批判に結びつき、連邦レベルでの選挙において政権交代の要因となってきたことが経験的に認められてきた。その際に卸売物価指数でみて対前年比10%のラインが物価政策の成否を分ける線とされ、そのため、二桁物価上昇率が政治的危機ラインとみなされてきた。
しかし、有権者の行動に直結するのは、卸売物価よりは消費者物価であるはずである。政治と物価変動の関連をたんなる経験則のレベルにとどめず、政治経済学的な観点からの実証分析の対象とするためには、諸物価指数間の相互関連や、物価変動の地域性なども含めた総合的な物価分析が必要になる。しかし、そのような作業はこれまで本格的に取り組まれたことがなかった。本稿は主として食糧価格変動にみられる指数間、および地域間の差異に着目して、10%危機ライン論のメカニズムを解明し、インド政治と物価変動に関する分析視角を提供するものである。