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論文要旨

Vol. 73, No. 4, pp. 319-342 (2022)

『移動,接触,旅行の新型コロナ感染リスク --ワクチン接種の効果--』
中田 大悟 (独立行政法人経済産業研究所)

本研究では,傾向スコアを用いた逆確率重み付き推計を行い,コロナ禍における人々の移動,対人接触,宿泊旅行が新型コロナ感染リスクにあたえた平均処置効果(ATE およびATT)を推定する.分析に用いるのは,2020年10月から2021年10月までの期間,インターネット調査会社のモニターを対象として3か月ごとに行われた調査によるパネルデータである.分析の結果,旅行や対人接触は高リスクではないものの,市中の感染拡大状況に応じて一定水準の平均的な感染リスクを与えるが,そのリスクは性別,年齢や居住地域という個人属性に応じて異なる.ただしコロナ禍の下でも,単純な外出行為そのものは感染リスクを高める行為とは言えない.また,緩やかな非医薬的介入である緊急事態宣言は,都市部における感染リスクを一定程度抑制した可能性がある.さらに,ワクチン接種者と未接種者でサンプルを分割して感染リスクを検証した結果,ワクチンは対人接触や旅行などのリスクを低下させることによって,感染拡大を相当程度抑制する大きな効果をもたらした可能性がある.