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論文要旨

Vol. 73, No. 3, pp. 254-280 (2022)

『実現ボラティリティ(Realized Volatility) --サーベイと日経225株価指数への応用--』
渡部 敏明 (一橋大学経済研究所), 中島 上智 (一橋大学経済研究所)

近年の計量ファイナンスの研究では,資産価格のボラティリティの推定量として,日中の高頻度データから計算される実現ボラティリティ(Realized Volatility; RV)を用いることが多い.これまでRVを利用したボラティリティの予測モデルには様々な定式化が提案されてきた.先行研究の中で,予測精度が比較的優れていると論じられているモデルとしては,Heterogeneous Autoregressive(HAR)モデルがあり,日次RVの変動が過去の日次,週次,月次といった周期の異なるRVの関数として定式化されている.また,日次の資産価格収益率からボラティリティを未知の変数として推定するモデルとして,GARCHモデルやStochastic Volatility(SV)モデルがあるが,これらにRVを加えた,Realized GARCH(RGARCH)モデルやRealized SV(RSV)モデルによるボラティリティ予測も注目されている.本稿では,まず,RVを用いたモデルについて先行研究のサーベイを行う.次に,日経225株価指数の日次リターンと日次RVを用いて,先行研究で扱われている主要なモデルについて,ボラティリティの予測精度の比較を行う.予測期間を新型コロナウイルス感染症の拡大前後で分け,優れているモデルが時期によって異なるかどうかも検証する.分析の結果,コロナの発生直後を含む期間では,HARモデルやRGARCHモデルの拡張であるREGARCHモデルの予測精度が比較的高く,それ以外の期間についてはコロナ前もコロナ継続期間もRSVモデルの予測精度が高いことが明らかになった.