HOME » 刊行物 » 経済研究

論文要旨

Vol. 73, No. 2, pp. 97-116 (2022)

『部分的株式所有を伴う企業間提携の理論分析』
森田 穂高 (一橋大学経済研究所), 秋山 薫平 (株式会社メンバーズデータアドベンチャーカンパニー), 荒 知宏 (福島大学経済経営学類), 野口 翔右 (Department of Economics, Rice University), アーゴ ゴーシュ (School of Economics, UNSW Business School, UNSW Sydney)

 水平的競争関係にある企業間の部分的結合は,それら企業の市場支配力を高め当該産業における競争を制限することにより社会的弊害をもたらす可能性がある.一方,部分的結合はまた,結合企業間の知識移転を促進したり,生産量をコストの高い企業からコストの低い企業に一部シフトしたりすることで,社会的に正の影響を及ぼす可能性もある.本論文では,これら影響のトレードオフ関係を明示的に取り入れた寡占競争モデルとして,部分的結合と知識移転の関係に焦点を当てるGhosh and Morita(2017)および生産量のシフトに焦点を当てたAra, Ghosh and Morita(2021)のモデルを議論し,部分的結合水準が内生的に決定されるプロセスを明らかにするとともに,その競争政策上の含意を議論する.また,水平的競争関係にある複数の企業が資本と知識・ノウハウを出し合ってジョイントベンチャーを設立運営することも,間接的な意味でそれら企業間の部分的結合と考えられることから,知識移転と知識流出の相互連関のなかでジョイントベンチャーへの出資比率が内生的に定まるAkiyama(2021)の理論モデルを議論し,その競争政策上の含意を議論する.