本稿は,2020年11月に経済産業研究所が実施して中小企業を中心に約5千社から回答を得た「新型コロナウイルス感染症下における企業実態調査」に基づき,企業が受けたショック,とった対応,利用した資金繰り支援措置の概要を集計するとともに,支援措置利用企業の属性に関して分析したものである.対象企業の一部が世界金融危機時に行った企業サーベイ調査にも回答していることを利用し,世界金融危機とコロナショックの間の異同にも注目する.得られた主な知見は以下の4点である.(1)多くの企業にとって,コロナショックは販売先企業や消費者への売上・販売の減少が顕在化したものであり,企業は,主に金融機関からの新規借入と休業・従業者の休職で対処した.(2)コロナショック後に資金繰りが「悪化した」企業の割合は世界金融危機時と同程度だが,資金繰りの水準が「悪い」企業の割合は世界金融危機時よりも高く,ショック以前から資金繰りが厳しかった企業が一定割合存在した.(3)多くの支援措置について,コロナショック前の評点が低い企業ほど利用する傾向にあり,特に政府系金融機関による貸出でこうした傾向が強い.(4)金融機関や政府の支援がなければ事業を継続できないゾンビ企業がサンプル企業全体に占める比率が,世界金融危機以降に高まっているかどうかはゾンビ企業の定義に依存するが,コロナショック時において世界金融危機時よりも明確に高まっているとはいえない.ショック前にゾンビと特定された企業が政府による支援措置を利用する比率は非ゾンビ企業よりも高く,その傾向は,世界金融危機時と今回のコロナショック後の期間のいずれにおいても観察される.