本論文では,1981−2015年の『家計調査』オーダーメード集計データを用いて世帯属性別のエネルギーおよび栄養素摂取量を推計し,日本人の栄養摂取状況の長期的動向を分析する.分析結果によると,『家計調査』を用いた推計は,『国民健康・栄養調査』に比較して,栄養素摂取量の水準では乖離があるものの,その比率として定義される栄養指標では概ね一致することが示された.また,1980年代以降,脂質からのエネルギー摂取率が大きく増加した一方で,タンパク質からのエネルギー摂取率はわずかな増加に留まっていること,さらに,経済階層の高い世帯ほど,多くの栄養指標でより望ましい状態にあるという「栄養格差」が存在する一方,一部の指標では「逆」栄養格差も存在することが明らかになった.