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論文要旨

Vol. 72, No. 3, pp. 228-245 (2021)

『研究開発投資とイノベーション --特許データを用いたアプローチ--』
王 悠介 (日本銀行), 高橋 耕史 (日本銀行)

本稿では,特許の被引用数でウエイト付けした特許取得数を試算し,近年の日本企業における研究開発投資や,イノベーションの動向を包括的に分析し,以下の3つの結論を得た.まず,企業レベルのデータを用いて,被引用数でウエイト付けした特許数を説明変数に加えた生産関数を推計した.推計結果から,特許で測ったイノベーションの蓄積は企業の生産性向上に寄与していることがわかった.また,探索的な研究開発活動の代理変数として,企業がこれまで進出していなかった技術領域での特許取得数を計算し,それを説明変数とするイノベーション関数を推計したところ,新領域への進出はその後のイノベーションにポジティブな効果を与えることがわかった.これらの結果は,探索的な研究開発活動がイノベーションを促進することを示唆している.更に,こうした探索的な研究開発活動は,マーケットシェアが高く規模も大きいが,企業年齢が若く,高レバレッジ・低ROAな企業ほど活発であることがわかった.