異時点間選択において経済学では指数割引効用が標準モデルとして用いられてきた.その一方で,記述理論としての指数割引モデルに対しては,実験や実証を通して,多くの反例が提示されてきた.本稿では,共通時間差効果,金額効果,リスク回避度と異時点間代替性の分離性,株式プレミアム・パズルとリスクフリーレート・パズル,時間に関する非分離性,時間くじへの危険回避度など,指数割引モデルへの様々な反例に対して,どのような一般化が考えられてきたのかを概観する.特に金額効果(将来の大きな利得ほど割引されにくい性質)を説明するモデルとして,著者自身の研究であるNoor and Takeoka (2020)の共感費用型割引効用について解説する.