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論文要旨

Vol. 72, No. 1, pp. 81-109 (2021)

『新興市場企業の所有構造と経営成果 --EU東欧加盟国・ロシア・中国のメタ比較分析--』
岩﨑 一郎 (一橋大学経済研究所), 馬 欣欣 (富山大学極東地域研究センター), 溝端 佐登史 (京都大学経済研究所)

本稿は,新興市場企業の所有構造と経営成果の因果関係という観点から,メタ分析によるEU東欧加盟諸国,ロシア及び中国の比較を試みた。先行研究204点から抽出した総計4,425推定結果を用いたメタ分析の諸結果は,新興市場全域及び研究対象国の違いに係らず,国家所有は,出資先企業の経営成果に負に作用する一方,国内外部投資家と外国投資家の企業所有者としてのプレゼンスは,正の効果を発揮することを示唆した。また,標準理論ではその効果の予測が不確定な経営者所有も,新興市場においては,自社の経営成果に肯定的な影響をもたらす可能性があることも併せて明らかになった。但し,所有構造と経営成果の結びつきは総じて弱く,先進経済諸国との比較において,新興市場諸国では,出資者による経営者の規律付けが十分ではない恐れが高い。企業統治システムの健全化に向けた政策措置や制度導入が急務である。