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論文要旨

Vol. 71, No. 4, pp. 358-376 (2020)

『医師専門医資格取得の男女差と医療現場の課題』
臼井 恵美子 (一橋大学経済研究所), 羽衣 杉雄 (一橋大学大学院社会学研究科)

本研究では,厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師調査」の医師届出票に基づき,医師免許取得以降の医師のキャリア経路を追跡するデータを整備し,その上で,医師の診療科とその後の専門医資格取得へのキャリア経路を分析した.女性医師の割合が高い診療科(産婦人科,小児科,麻酔科)においては,医師として初期の段階で取得する基本領域の専門医資格に関しては,女性医師の方が男性医師よりも取得する傾向が高く,男性医師の方は,初職とは別の診療科の基本領域の専門医資格を取得する傾向がある.一方,女性医師の割合が低い診療科(外科,内科,脳神経外科,整形外科,泌尿器科)においては,基本領域の専門医資格について,女性医師の方が男性医師よりも取得している傾向が低かった.また,ほとんどの診療科において,男性医師に比べると女性医師は,より専門的なスキル獲得を示すサブスペシャリティ領域の専門医資格を取得している傾向が低かった.このような,専門医資格取得における男女の違いを踏まえると,男性医師の割合の高い診療科において女性医師が継続して働けるようにすること,すべての診療科において女性医師がサブスペシャリティ領域の専門医資格を取得できるように環境を整備することが,女性医師のキャリアアップに有効ではないかと考えられる.