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論文要旨

Vol. 71, No. 4, pp. 317-332 (2020)

『内戦下の暴力とリスク・時間選好 --パキスタン北西部の事例より--』
黒崎 卓 (一橋大学経済研究所), 窪田 悠一 (日本大学法学部), 大林 一広 (一橋大学法学研究科)

内戦からの復興過程にある開発途上国において,内戦下で暴力を経験したことは,様々な影響を残している可能性がある.そこで本稿は,リスク選好と時間選好に焦点を当て,内戦を経て2018年に中央政府の統治下に移行したパキスタン北西部の事例について分析する.分析に用いるのは,2018年から19年にかけて収集した独自の質問票調査から得た約2,800名のミクロデータである.分析結果からは,内戦暴力被害を受けた場合にリスク回避度が高く現在バイアスが強くなること,リスク回避度については,多様な暴力を受けている場合や,本人だけでなく家族も被害を受けている場合にその傾向が顕著になること,リスク・時間選好ともに,教育水準が低い場合に,その傾向が強いことなどが明らかになった.

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