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論文要旨

Vol. 71, No. 4, pp. 289-316 (2020)

『1940年代の家計消費の補間』
小池 良司 (日本銀行金融研究所)

本稿は,1940年代の家計支出額について,初めて活用した1942年の『家計調査』など太平洋戦争期の資料を多く用い,欠損期を補間しつつ整理した.まず,家計支出額の名目値を都市家計・農家家計別に補間・整理し,闇価格・闇ウエイトを勘案した実効物価を用いて実質値を試算した.都市家計の実質値は,異なる想定のもとでも,1945年は1940年比3–4割の水準まで悪化した.農家家計の実質値は,1943–46年に同6–7割の水準で停滞した.次に,都市と農家の支出額を人口比で加重平均し,既存統計の1人当たり家計消費額と比べた.実質値では,試算値は1944年には1940年比5割強の水準まで低下し,既存統計(同7割水準)を下回った.既存統計に無い1945年値は1940年比5割弱から5割強の水準となった.これらの値と,1874(明治7)年まで遡った1人当たり実質消費額を比較すると,1945年の家計消費は太平洋戦争により明治前期である1875–80年並みの水準まで低下したと考えられる.

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