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論文要旨

Vol. 71, No. 3, pp. 259-274 (2020)

『学歴は中高年の健康をどこまで左右するか --「中高年者縦断調査」を用いた直接・間接効果の計測』
小塩 隆士 (一橋大学経済研究所), 菅 万里 (兵庫県立大学経済学部・経済学研究科)

学歴が健康に大きな影響を及ぼすことはよく知られている.本稿では,厚生労働省「中高年者縦断調査」から得られるパネル・データを用いて,学歴が中高年の健康にどのような長期的影響を及ぼすかをその経路に注目して分析する.同調査は,2005年の第1回調査で50-59歳だった男女の生活環境や健康状態などを毎年追跡調査している.本稿の分析では,(1)同調査の第1回調査から第12回調査にかけての主観的健康感やK6スコアで測定される抑鬱の変化や,(2)ADL(日常生活活動)における問題の発生や各種生活習慣病の発症までの期間が,学歴の違いでどこまで左右されるかを調べる.分析に際しては,学歴が健康に及ぼす影響が,所得や就業形態,健康行動,婚姻,社会活動などそれぞれの経路を通して,どの程度媒介されているかも計測する.