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論文要旨

Vol. 71, No. 1, pp. 83-101 (2020)

『戦間期日本における農家の世帯人口の変動と労働配分』
草処 基 (東京農工大学農学研究院), 丸 健 (西武文理大学サービス経営学部), 高島 正憲 (関西学院大学経済学部), 斎藤 修 (一橋大学経済研究所)

昭和恐慌によるショックから回復し戦時体制が本格化していく1930年代の日本農村は,わずか10年ほどの間に人口滞留期から流出期へと移行した.1930年代後半には兵役への動員や兼業機会の増大により若年男子の他出が増加したが,これは,以前は家に留められることが多かった長男の他出をも伴う動きであった.農林省第3期農家経済調査の個票パネルデータを用いて,若年男子労働力の大量流出に対する世帯内労働力の再配分を,定量的手法により分析した.1930年代後半には,壮年女子によって若年男子の農業労働が代替されるようになり,若年男子労働力の喪失とともに,女子労働力への依存が高まったことが定量的に確認された.また,強くではないものの,長男の他出に対しては若年女子や次男など他の若年男子で農業労働を代替する傾向が見られ,若年男子の他出が他の世帯員の労働に与える影響は出生順序により一様ではないことが示唆された.