本研究の目的は,地域間における所得格差の要因として,所得税における所得再分配効果の影響を明らかにする点である.特に,日本の都市部と地方部において不平等や所得再分配が1984 年から2009年にかけてどのように変化したのかを明らかにする.分析の結果,次のことが明らかとなった.第1 に,課税前所得,課税後所得共に,地方部よりも都市部において大きな不平等が存在することが分かった.しかし近年,地方部における不平等の拡大により,格差は縮小傾向にある.また,第2 に,所得税の再分配効果は地方部よりも都市部において大きいことが明らかとなった.一方,セクター間要因の影響はほとんどないことが明らかとなった.第3 に,都市部においては84 年から2009 年にかけて所得税の再分配効果は減少していることが示された.一方,地方部においても再分配効果は減少傾向にあるが,断定できる結果は得られなかった.