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論文要旨

Vol. 70, No. 3, pp. 200-224 (2019)

『左派・右派イデオロギーと経済政策選好 --日本,西欧,米国の比較分析--』
岡部 智人 (一橋大学経済研究所), 野際 大介 (福島大学経済経営学類)

左派・右派による政治対立を経済政策を巡る対立の構図としてモデル化する理論研究は,政治の政策への影響を考察する上で有益である.本稿では,このような内生的政策決定モデルないしはそれに類似するモデルの日本へ適用可能性を吟味するため,イデオロギーや関連する政策選好の調査データを用いて,西欧・米国との比較分析を行った.具体的には,統計的検定を使って,政党のイデオロギー指標を分析した結果,日本では,自由民主党が右派,民主党,公明党,日本社会党,日本共産党が左派として分類されることを確認した.一方,関連する経済選好については,自由民主党と民主党,自由民主党と公明党との間にそれぞれ有意な差が確認できなかった.これらは他国では確認できなかった日本特有の結果である.また,日本の有権者の支持政党とイデオロギーについて潜在クラスモデルを用いて分析した結果,有権者が5つのグループに大別されることを確認した.そして,有権者のイデオロギーと支持政党の党派性との間に,ある程度一貫性が見られることも確認した.最後に,本稿で得られた分析結果の内生的政策決定のモデル化への含意と,考えるべき今後の課題について提示した.