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論文要旨

Vol. 69, No. 4, pp. 289-313 (2018)

『余暇への時間・金銭投入に関する一考察』
阿部 修人 (一橋大学経済研究所), 稲倉 典子 (大阪産業大学経済学部), 小原 美紀 (大阪大学大学院国際公共政策研究科)

本研究では,家計内生産として日本の家計が余暇の時間と財サービスの投入を決定するメカニズムに関して,特に,家計が直面する時間制約や予算制約が娯楽や美容,行楽,交際,スポーツなどの健康促進活動など,様々な余暇消費のために投下されている時間と財サービス支出に与える影響を分析した.具体的には,都市部在住の個人に対して,自己啓発,趣味・娯楽,スポーツ,交際,行楽といった各種余暇活動に対する支出及び時間投入に関する情報を独自サーベイにより収集し,操作変数を用いた二段階推計により,多様な家計内生産活動における時間投入と財サービス支出投入の決定式を推計した.推計結果によると,余暇活動の時間および支出投入のライフサイクルプロファイルの形状は,余暇活動により多様であり,単純なライフサイクルモデルが想定しているものとは大きく異なるメカニズムが働いていることを示唆している.また,世帯年収の増加は,多くの余暇カテゴリーにおいて支出と時間の両方を増加させ,労働時間の増加は,支出と時間の両方を減少させていた.しかしながら,趣味・娯楽,および交際に関しては,他の余暇と異なる結果となっており,趣味・娯楽の一部で時間投入と金銭投入の代替性の存在を示唆する結果を得た.また交際に関しては労働時間と金銭投入の間に正の関係があり,交際活動が外部労働市場における活動と分離可能ではない可能性を示唆している.