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論文要旨

Vol. 69, No. 3, pp. 227-241 (2018)

『妊娠知識が出産に対する主観的期待に与える影響』
臼井 恵美子 (一橋大学経済研究所), 小林 美樹 (佐賀大学経済学部)

女性の妊孕性は,年齢が高くなるほど低下する.米国では養子縁組が広く普及しているため,子どもをもうけることができない夫婦でも子どもを持つことができるが,日本では米国のような状況ではないため,女性の加齢とともに,夫婦が子どもを持つ可能性は確実に低下する.本論文では,加齢とともに女性の妊孕性が低くなるという知識(特に,女性は30代と比べて40代の受胎率は低くなるという知識)の有無によって,子どもを持つ主観的期待確率に違いがあるかどうかを,全国レベルの個票データを用いて検討する.分析の結果,子どもがいない40代前半の女性及びその年齢の配偶者をもつ男性のグループは,正しい妊娠知識がある人より,正しい妊娠知識がない人のほうが,生涯にわたり子どもを持つ主観的期待確率が,10%程度高いことがわかった.このことは,妊娠についての正しい知識の普及により,妊娠適齢期に子どもを産むことを促すことで,子どもを持つことができる夫婦が増え,結果として,日本の少子化に歯止めをかける一助となる可能性があることを示唆する.