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論文要旨

Vol. 69, No. 1, pp. 55-74 (2018)

『応急仮設住宅における社会的孤立 --福島県の事例--』
庄司 匡宏 (成城大学経済学部), 赤池 孝行 (特定非営利活動法人 3.11被災者を支援するいわき連絡協議会)

福島第一原発事故避難者が入居する仮設住宅において,どのような避難者が社会的孤立に陥ったのか? また,その傾向は時間とともにどのように変化したのか? 本稿は福島県いわき市の仮設住宅で2013年9月に行った独自世帯調査を用いて,これらの問題に答えようとするものである.本稿の特徴は,仮設住宅入居後の孤立の推移を分析する点,個人の性格を表す主要5因子の影響にも注目する点,そして世帯調査の回答回収率が高い点の3点である.分析結果によると,回答者の3割は入居当初に仮設住宅内で話し相手が一人もおらず,6割が緊急時に手助けを頼める相手が誰もいなかった.調査時点でも依然として5%の人々が誰とも会話をしていなかった.また孤立者には,若者や内向的個人,利己的個人のように入居時から継続してネットワーク規模が小さい避難者と,男性や無職者のように入居時のネットワーク規模は平均的であったものの,その後のネットワーク形成が停滞した避難者の2タイプが存在した.最後に大規模仮設住宅や駅周辺の仮設住宅では,男性のネットワーク形成がさらに停滞した.