本稿は,企業内の社員間コミュニケーション・ネットワークの構造,およびそれが業務成果に与える影響について定量的に分析することを目的とする.ウェアラブルセンサによって,法人顧客向けソフトウェア・サポート業務を行う企業の2つの事業所の社員同士の対面コミュニケーション行動データを収集した.このデータを用い,まず,ソシオグラムによってコミュニケーション・ネットワークの構造を明らかにした.次いで,各社員の成果データ(生産性)を用い,コミュニケーションが個人および事業所の生産性に与える影響を分析した.その結果,コミュニケーション・ネットワークにおける媒介中心性の上昇は事業所の成果に頑健に正で有意な影響を持つことが示された.このことは,知的業務におけるコミュニケーションが知識・情報交換であるがゆえに,直面した問題に対し,適切に他の社員からコミュニケーションによって情報収集することが重要であることを示唆する.