本稿は,1995年1月に発生した阪神・淡路大震災の被災地において企業が受けた被害と回復の過程について分析する.最大で約9万社の個別企業データを用い,震災が企業の存続と倒産に与えた影響,震災が企業移転に与えた影響,震災後の被災企業による復旧・復興のための設備投資に関する3つの分野に関して,ファクトファインディングを行う.主な結果は以下の通りである.第一に,被災地金融機関と取引関係にあった被災地企業において,震災後の倒産確率が有意に上昇する.第二に,被災地では産業集積の進んでいた地域に立地していた企業ほど移転率が高まるが,約1/3の企業の移転距離は1kmに満たない.第三に,被災地金融機関と取引関係があった被災地企業では,設備投資の増加幅が抑制されている.