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論文要旨

Vol. 63, No. 4, pp. 305-317 (2012)

『ロシア農村における個人副業経営のセーフティネット機能 ――ロシア家計調査の個票データに基づく実証分析――』
武田 友加 (一橋大学経済研究所)

本稿は,全国レベルだけでなく連邦構成主体レベルの代表性をもつロシア家計調査の個票データを用いて,移行不況を脱し経済成長が持続的に見られるようになった2000年代においても,所得ショックに直面する場合,ロシア農村家計,特に,農村貧困家計は個人副業経営のセーフティネット機能を強めることを実証的に明らかにした.本稿における実証結果は,個人副業経営が所得ショックから回復する調整機能を果たしているということを支持するものであり,動学的な貧困の罠のモデルが仮定する低位均衡がロシアでみられないのはこのような調整機能の存在によることを示している.個人副業経営を行う生産コストは制度的に低く抑えられているため今後も個人副業経営は存続し,ロシア農村家計,特に,農村貧困家計が所得ショックに直面した際には,生存維持のために個人副業経営のセーフティネット機能を強めると考えられる.