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論文要旨

Vol. 63, No. 3, pp. 249-264 (2012)

『所得税の重税感 ――『日本版総合的社会調査』個票データによる諸要因の分析――』
大野 裕之 (東洋大学経済学部)

本研究は『日本版総合的社会調査』の2000年から2005年の個票データで,納税者が抱く所得税の「重税感」に影響を及ぼす諸要因を, 順序型ロジットモデルを推計して明らかにした.所得が高い人, 「担税力」を示す社会階層が低い人ほど重税感が大きくなったが,自営業者は他の就業形態に比して重税感が顕著に小さいことが判明し,クロヨン,トーゴーサンなどの所得税の業態間不公平と整合的な結果が得られた.但し,農林漁業者は他の自営業者に比して重税感が小さいという証左はなく,また「サラリーマンの重税感」は,自営業者との対比において認められるに過ぎない.他には,所得階層によって異なるものの,高学歴,政治意識,町村居住などが有意な影響を与えることがわかった.また,「格差社会」の懸念と整合的に,2000年から2001年に低所得者層の重税感が増し,2003年から2005年に中間層以上でそれが緩和したことも示唆された.