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論文要旨

Vol. 63, No. 3, pp. 209-226 (2012)

『輸送インフラストラクチャーの整備と農産物市場の統合 ――マダガスカルのコメ市場の分析――』
三宅 元 (シャープ(株)), 櫻井 武司 (一橋大学経済研究所)

サブサハラ・アフリカ諸国では一般的に、輸送インフラストラクチャーの不足が物資や人の移動を妨げている。特にマダガスカルは道路状況がサブサハラ・アフリカ諸国で最も悪い国の一つであり、それが国内の流通を分断してきた。しかしマダガスカルでは近年少しずつ道路状況が改善している。本研究では2007年に始まった道路整備がマダガスカルのコメ市場の統合に与えた影響を分析した。
 マダガスカル主要6都市(各州の州都)のコメ市場の精米価格は裁定による価格調整が行われており、市場が統合していることが示唆された。また、2007年に道路が新設された北部では、取引費用を含む広義の輸送費用の低下傾向が確認できた。
 しかし、道路整備による輸送費用の低下が価格調整速度を上昇させている証拠はなく、むしろ燃料価格高騰を機にマダガスカル全体で価格調整速度の低下傾向が見られた。燃料価格が元の水準に戻っても価格調整速度は低下したままであり、輸送費用の上昇が運送業者の寡占を進めた可能性がある。