景気循環の局面において,失業率の上下動がどの年齢層に集中・分散するかは国によって大きく異なる.この論文では景気循環局面における若年失業率の変化率と壮年失業率の変化率の差がさまざまな労働市場の制度によってどの程度説明できるかを,先進18カ国の1971年から2000年までのクロスカントリーのパネルデータを用いて分析する.推定の結果,解雇規制が強い経済においては中高年失業率の変動は景気変動に対して非感応的であるが,若年の失業率変動を和らげる効果はほとんど持たないことが明らかになった.これは中高年労働者について労働保蔵のインセンティブが弱いため解雇費用の役割が相対的に大きくなるという理論的な予測と整合的である.また,労働組合の組織率が高い経済においても,経済へのショックは若年層の失業率によって吸収される傾向が強いことも示された.