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論文要旨

Vol. 60, No. 4, pp. 306-313 (2009)

『わが国の「マクロ・金融」研究の課題と展望―『経済研究』からの示唆―』
福田 慎一 (東京大学大学院経済学研究科・経済学部)

本稿では,第31巻から第59巻までの『経済研究』に掲載されたマクロ・金融の分野の論文を概観し,その特徴やそれがその後の研究に与えたインパクト等を中心に議論を行った.『経済研究』は,日本のトップクラスの経済学専門誌として多くの秀作を掲載してきた.マクロ・金融の分野も例外ではなく,その後の研究に大きな影響を与えた注目すべき研究成果が少なからず掲載されている.その多くに共通した特徴は,欧米流の経済学の単なるコピーでない,日本やアジアの実情に即した経済分析である.純理論では見落とされがちな日本やアジア地域の現状を実証的に考察し,これまでと異なる斬新な問題提起を行うことは,地域経済の研究にとっては貴重である.この点は,制度や慣習などに取引が影響される金融の分野ではとりわけ重要である.『経済研究』が,日本語での投稿も受け付ける国内のトップ・ジャーナルとして,数多くの日本経済を中心とした地域研究の論文を掲載してきた意義は大きいといえる.