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論文要旨

Vol. 59, No. 1, pp. 30-45 (2008)

『「新しい開放マクロ経済学」に基づく金融政策の国際波及効果―ドル建て取引を仮定した日米ANIES3ヶ国モデルによる分析―』
道和 孝治郎 (神戸大学経済経営研究所)

現在,企業の貿易に対する契約通貨として,主に米ドルが世界で使用されている.特に,我が国とアジアNIES(ANIES)といった2国間においても,第3国通貨である米ドルが主要取引通貨として使用されている.本稿は,こうした現状を踏まえて,ドル建て取引に基づいて輸出取引を行うと,金融政策の国際波及効果がどのように修正されるかを分析するために,近年著しく発展している「新しい開放マクロ経済学(New Open Economy Macroeconomics)」をフレームワークとして用いて分析した.解析的分析と数値解析に基づけば,世界が日本・ANIES・アメリカで構成されると仮定するとき,ANIESの生産や経常収支に及ぼす日本の金融政策の効果が弱められることが示された.一方で,経済厚生に関しては,日本の金融政策がANIESに対して,僅かながらも「近隣窮乏化効果」をもつことを数値解析を行うことで明らかにされた.本稿は,3ヶ国・ドル建て取引という仮定の下で,出来る限り解析的・解釈可能な分析を行い,新たな知見を得ようと試みている.