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論文要旨

Vol. 58, No. 4, pp. 335-351 (2007)

『多変量因子確率的ボラティリティ変動モデル』
大森 裕浩 (東京大学大学院経済学研究科・経済学部)

本稿では危険資産の多変量時系列のモデルとして近年研究の進められている幾つかの多変量確率的ボラティリティ変動モデルについて取り上げ,拡張を行ったモデルについてマルコフ連鎖モンテカルロ法による推定方法を提案する.特に株式市場における多数の株式収益率のモデルでは,多変量確率的ボラティリティ変動モデルに共通因子が潜在変数として導入されているため,パラメータや潜在変数の個数が多くなり,最尤法による推定方法は困難である.また,この拡張されたモデルでは,株式市場で観察されるボラティリティの非対称性を未だ考慮していない.このため本稿ではベイズ・アプローチをとり,多変量因子確率的ボラティリティ変動モデルを非対称性を含むモデルに拡張し,効率的なマルコフ連鎖モンテカルロ法を用いた推定方法を提案する.