インドのアーンドラ・プラデーシュ州農村部において筆者らが収集した詳細な家計データを用い,家計内資源配分に関する最適化問題の統一的な理論枠組みに基づき,児童労働や就学の決定要因を実証的に分析した.第1に,誘導型モデル,母親の就労や家計の信用制約に焦点を当てた,より構造的な実証モデルの両方から,子供の祖父母世代の属性がシステマティックに子供の時間配分に影響することが判明した.ここから示唆されるのは,調査地域では,家計を統一的な経済主体とみなした理論モデルよりも,父親と母親間のバーゲニングが重要な理論モデルの方が適切である可能性である.より構造的なモデルの推定結果からは,信用制約が,家計の主観的利子率を引き上げて,就学の人的資本投資としての魅力を減少させる効果だけなく,母親の市場向け労働を増やし,そのことが子供とりわけ女子の家事・育児負担を増やす効果をも通じて,児童の就学を妨げることが示唆された.