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論文要旨

Vol. 55, No. 1, pp. 15-25 (2004)

『外部性を伴うアロー=ダスグプタ経済におけるマキシミン経路』
須賀 晃一 (早稲田大学政治経済学部)

ロールズのマキシミン原理は,世代間衡平性の有力な基準の1つと見なされているが,その直接的適用は特異な結果を生む.すなわち,最初の世代(第0世代)が最も不遇な立場におかれ,すべての世代に対していかなる貯蓄も要求しない.ロールズ自身は,世代間衡平性の問題に対するマキシミン原理の直接的適用を否定して,それぞれの世代が直近の子孫が享受する消費に対して家父長的な関心を持っているという仮説の採用を強く主張した.その帰結を追求したアロー,ダスグプタは,マキシミン原理が論理的な欠陥を保持しており,そのために不可解な結果を引き起こすことを示した.本稿では,彼らの動学モデルに環境的外部性を導入すると,いかなる動作特性が示されるか,帰結の変化にいかなる役割を果たすかを考察する.