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論文要旨

Vol. 54, No. 1, pp. 33-46 (2003)

『日米仏の設備投資行動の国際比較―日本的特徴に関する分析―』
花崎 正晴 (一橋大学経済研究所), Tran Thi Thu Thuy (一橋大学大学院経済学研究科博士課程大学院生)

本稿は、日米仏製造業の企業財務データを用いて設備投資行動を比較分析し、日本的特徴を明らかにすることを目的としている。第一に、設備投資のファイナンス面に注目すると、日本企業の設備投資が米仏企業にたいして、キャッシュフローに制約される程度が高いという結果が得られた。この事実は、日本のメインバンク・システムが、欧米の資本市場を中核とするシステムに比べて内部資金制約を緩和して設備投資を促進するうえで、必ずしも有効性が高いとは言えないことを示唆している。第二に、日本企業の特徴としてしばしば指摘される長期的視野に基づく行動は観察されず、他方横並び行動は日米仏共同に観察された。第三に、収益率に関してマクロ的な指標と各企業の個別要因を表す指標とを比較すると、アメリカでは各企業の収益性が当該企業の設備投資に対して有意に影響を及ぼしているのに対して、日本企業の設備投資はそれぞれの企業の資本収益率よりもマクロの経済成長率に有意に反応すると言う、極めて対照的な結果が得られた。