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論文要旨

Vol. 54, No. 1, pp. 19-32 (2003)

『体位の成長と経済発展―明治期山梨県学校身体検査記録の分析―』
斎藤 修 (一橋大学経済研究所)

計算体格史では徴兵記録に依拠して、経済発展の初期局面における都市化は疾病環境を撹乱し、体位に負の影響をあたえたと言う「生物学的ペナルティ」の議論がなされてきた。本稿では、(1)成人ではなく児童の体位とその成長を分析対象とし、(2)疾病環境の他に母親の労働および家庭内の生活環境をも重視して、(3)明治期山梨県の学校身体検査記録を分析する。データを市町村別に地方病の有無をコントロールして再集計した結果、低年齢の(母親からの累積的な栄養状態を反映する)身長の場合は、都市が農村より勝っていたが、その後の成長は農村において急であったこと、(カレントな栄養状態の指標である)BMI水準は全年齢において農村が勝っていたことが明らかとなる。これは、都市化の疾病環境撹乱効果を再認識すると同時に、農業成長とともに増加した農家女性の労働負担が子供の体位にマイナスの影響をあたえていた結果でもあると解釈される。