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論文要旨

Vol. 53, No. 3, pp. 247-267 (2002)

『ロシアにおける1990年代の人口・年金危機―移行経済の世代間利害調整に関する予備的考察―』
久保庭 眞彰 (一橋大学経済研究所), 田畑 伸一郎 (北海道大学スラブ研究センター)

本稿は、1990年代のロシアにおいて、高インフレ下で生産危機と平行して進行した人口と年金の危機的状況を統計的ないしは制度的に分布することを目的としている。人口危機に焦点を定めたパート1では、今後予想される長期人口のスタートを早期化したのもとして1990年代人口危機を位置付け、その統計的内容を国際比較の中で明らかにする。危機による早死男性人口数は1992-2000年で約200万人にのぼると推定される。従属人口指数(比率)からみた年金負担の動向と見通しにも言及する。年金危機を取り扱うパート2では、1990年代にロシアの年金は大幅に低下し、最低生存費をわずかに上回る程度で推移したことを実証する。これには、従属比率が極めて高いこと、国家の管理が弛緩するなかで実際の保険料率が低いこと、インフレに対するスライド制を著しく弱めるような年金算定方法がとられたことなどが影響した。