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論文要旨

Vol. 53, No. 3, pp. 236-246 (2002)

『枯渇性資源・環境と持続的成長』
浅子 和美 (一橋大学経済研究所), 川西 諭 (上智大学経済学部), 小野 哲生 (筑波大学社会工学系)

本稿では、枯渇資源や環境問題が経済成長の制約となる状況下で世代間の分配問題を考慮すると、「持続的成長」がコンセンサスを得やすい選択肢となることを考察する。ここで持続的成長ないし持続可能な発展経路とは、時間の経過につれて社会厚生が低下しない経済成長経路であり、その意味で後世代に対して一方的に負担を強いることのない世代間の分配状況である。こうした問題の検討を対象とした分野を「環境と成長の経済学」と呼ぶならば、本稿はそのコンパクトな展望となっている環境と成長の経済学では、基本的な問題認識として、望ましい経済成長とはいかなるものか、分権的市場機構で望ましい成長経路を達成できるか、の2つの主な関心事となる。実は、これらの問いに対する答えは、枯渇性資源を考える場合と環境破壊・汚染を考える場合とで異なる。その違いを明確にするため、本稿では当初にこれらを別の問題として扱い議論し、後にその総括を行う。