日本の公的医療保険制度は、高齢化の進展により高齢者医療費の急速な増加を招き、現在存続の危機にある。老人医療費の無料化政策以来、高齢者自己負担の低さによる受診率の高さ故に、老人医療費は若年世代の4瑛以上に達する。医療費は若年世代に負わされ、医療は年金同様に賦課方式に準ずるものとなった。1997年9月に医療費の改訂が行われたが、それは組合健保の被保険者本人の自己負担を1割から2割に引き上げ、同時に薬剤一部負担の導入および高齢者外来医療費の改定だった。この改定効果を本稿では組合健保のレセプトデータによって明らかにする。まず総括的な記述統計により、本人の外来の受信抑制と1レセプトあたりの医療費の低減が明らかにされる。次に改定効果を計量分析し、当該改定が被保険者本人に相当の影響を及ぼしたが、特定の所得階層への偏った影響は認められず、その点で、必要上可欠の受診の排除は認められなかったことなどが明らかにされる。