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論文要旨

Vol. 53, No. 3, pp. 193-203 (2002)

『世代間衡平性の厚生経済学』
鈴村 興太郎 (一橋大学経済研究所)

年金制度の改革のように現時点で重複して共存する世代間の負担の衡平性の、問題から、地球温暖化に対処する国際的な制度設計と合意形成のように長期にわたり国境さえ越えて将来世代に影響をおよぼす環境的外部性の問題にいたるまで、多くの経済問題の核心には世代間衡平性という共通の難問が潜んでいる。本稿は、長期にわたる環境的外部制の問題を念頭において、世代間衡平性に関する厚生経済的研究の現状を簡潔に展望・評価することを目的としている。まず、従来の規範的経済学の蓄積のなかから2つのCambridge traditions を掘り起こして、それぞれの伝統が世代間衡平性の理論にもたらす示唆を批判的に評価する。次に長期にわたる環境的外部制の問題のユニークな特徴を確認して、このような現象を的確に分析する厚生経済学はどのような情報的基礎を必要とするかに関して私見を述べる。最後に、伝統的アプローチに替わる責任と補償のパラダイムを説明して、このアプローチが開拓する新たな理トン適展望に素描する。