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論文要旨

Vol. 53, No. 1, pp. 64-78 (2002)

『資産価格が消費に与える影響について―アメリカのケース―』
祝迫 得夫 (一橋大学経済研究所/筑波大学社会工学系)

金融資産が消費に与える資産効果、とくに株価の資産効果は、実物経済の変動の要因として、しばしば注目されている。しかし、消費と株価はともに前向きの経済変数であるため、「純粋な」資産効果というものが存在する余地は、ほとんどない。本論文では、アメリカ経済史上の出来事である。1929年・1987年それぞれの株価暴落に関して、この議論が正しいものであることを検証する。同時に、1990年代のアメリカの消費ブームの関係についても、検証をおこなう。1990年代初頭に始る消費ブームが、1990年代末の株価ブームより先に発生したという点で、この時期のブームの状況は、それ以前の(日本のバブル期を含む)株式市場の熱狂とは異なっている。一般的な認識と異なり、1997年ごろまでの株価の上昇はバブルではない可能性が高いが、一方、1998年から2000年にかけて一層の上昇は、どのような議論を持ってしても正当化するのは難しい。