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論文要旨

Vol. 53, No. 1, pp. 53-63 (2002)

『国有企業における所有権改革は有効か―中国鉄鋼企業に関する事例研究―』
劉 徳強 (東京学芸大学教育学部)

国有企業における所有権改革が果たして有効であるかどうかに関しては、大きく議論が分かれている。しかし、この問題に関する実証分析が乏しいために、どの主張にも説得力のある裏付けがないのが現状である。本論文では、中国鉄鋼業を対象に、較的豊富で信憑性に高い第三次工業センサス資料と比率を指標として所有権改革の生産性への効果を分析した。分析方法としてFixed Modelに基づく生産関数分析を採用した。分析結果によると1)所有権改革は従来の国有企業体制をとっている企業の生産性向上には有効ではないが、株式制度が導入された旧国有企業においては、国有資本と比べ、法人資本が生産性の向上に貢献している。このような分析結果から、国有企業を抜本的には、非国有資本の比率を高めると同時に、企業形態の転換を逸そう推進する必要があると言えよう。