HOME » 刊行物 » 経済研究

論文要旨

Vol. 51, No. 3, pp. 209-219 (2000)

『Forward Premium Puzzleについて―日米金利差は円高を予想していたか―』
坪内 浩 (一橋大学経済研究所)

Forward Premium Puzzleというのは変動相場制を採用している主要通貨間で、先物為替レートが直物為替レートの効率的な期待値になっていないだけでなく、直物為替レートの変動と直先スプレッドの間に負の相関がみられるというパズルである。このうち、「先物為替レートが直物為替レートの効率的な期待値になっていない」という点については、先物為替レートがリスク・プレミアムを反映していると仮定することによって説明することが可能であるが、「直物為替レートの変動と直先スプレッドの間に負の相関がみられる」という点については、リスク・プレミアムの存在を仮定するだけでは説明することはできない。
 本論においては、先物研究において為替レートのリスク・プレミアムを確率変数と仮定していたことがFuture Premium Puzzleを発生させる原因になっていた可能性があり、リスク・プレミアムを確定的トレンドと考えることによってパズルが解消されることを示す。また、変動相場制への移行以来観測された、行先き円高の直先スプレッドつまり米国の相対的な金利高は主としてリスク・プレミアムの存在によるものであり、円高を予想したいたわけではないこと、さらに、直物為替レートの変化はほとんど期待されていなかった要因に基づくものであることがわかった。