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論文要旨

Vol. 51, No. 2, pp. 136-151 (2000)

『戦後日本国内における経済収束と生産要素投入―ソロー成長モデルは適用できるか―』
深尾 京司 (一橋大学経済研究所), 岳 希明 (一橋大学経済研究所)

戦後の日本では、変動係数、収束係数、いずれで見ても地域間所得格差が大幅に縮小した。本論文では、県別に、民間資本ストック、公的資本ストック、学歴別就業者数等の生産要素投入量と民間・政府貯蓄投資差額、人口の流出入、学歴別人口移動等の生産要素移動に関するデータを作成し、日本国内での経済収束の原因を詳細に分析した。その結果、Barro and Sala-i Martin (1992b)が十分な根拠なしに仮定したソロー成長モデルの収束メカニズムは日本国内の経済収束には当てはまらないことが判った。ソロー成長モデルで収束の鍵となる当初豊かな地域ほどその後の民間資本ストックの成長率が低いという関係は観察されなかった。我々はまた生産性の変化を考慮に入れたトランス・ログ生産関数を推定することにより、貧しい県による技術キャッチアップと以上のような各生産要素の投入変化が、それぞれどの程度経済収束に寄与したかを数量的に比較した。その結果、1955*73年の時期については貧しい県ほど公的資本労働比率と人的資本の成長率が高くまた就業人口の成長率が低かったことが収束に寄与し、技術のキャッチアップは収束にあまり寄与せず、民間資本の蓄積はむしろ格差を拡大する効果を持ったこと、1973年以降についてはそれまでの民間資本の蓄積が格差を拡大する効果が無くなる一方、就業人口の変化と技術のキャッチアップが収束に寄与したとの結果得た。