本稿は、従業員の主観的賃金格差が労働インセンティブにどのような影響を与えるか、を実証分析した。分析結果によれば、賃金体系や人事制度の整備はもちろんのこと、企業内賃金格差に関する情報が従業員に正確に伝わらないと労働インセンティブ品高まらないことが分かった。このことは、賃金格差の情報は賃金体系を補完する機能を持ち、それは従業員の賃金情報から労働インセンティブヘの変換効率を高めると考えられる。ただし、より重要なのは、賃金格差の情報があまりにも正確に伝達してしまうと、賃金の低い従業員の労働インセンティブをさらに低下させてしまう可能性があることである。